JKは鼻歌を歌いながら、早朝のキッチンに立っていた。
慣れた手つきで冷蔵庫から材料を取り出し、カッティングボードの側に並べていく。
『シャワーとかそんなのいいからそのまま来てよ』
昨晩は、出番が終わったタイミングを見計らってメッセージを入れておいた。
念を押しておかないと、約束の時間を思い切り過ぎてから、つるりとした顔でやって来る相手だ。
ドアを開けたら、わざとらしく疲れた顔をしてJMが立っていた。その場面からずっと順に、この一晩を頭の中でなぞっていく。
タタタタタッと野菜を細かく刻みながら、相手の呼吸が段々と浅く速くなっていく様を思い出して、JKはひとり頬を緩ませた。
久しぶりにそんな夜を過ごした後の朝くらいは、誰かに訊いてほしい。
『彼のどこが好きなの?』と。
ルーズで丁寧で
我儘で他人思いで
大胆で慎重で
厳しくて優しくて
しなやかで不器用なところ
肌が滑らかで
目の下から頬にかけての膨らみが愛らしい
唇だけで感情が分かるし
耳の裏は少し寂しげだ
顎から首のラインがセクシーで
みぞおち辺りの無防備さがたまらない
足の付け根は驚くほど柔らかく
そこからすらりと伸びた脚で空高く飛び跳ねて
星に触れることさえ出来そうだ
彼が泣けば悲しくて腹が立つし
彼が笑えば本当に幸せな気持ちになる
つまり、自分は心底彼が好きで
そして幸運なことに
彼は今、自分の寝室で眠っている
いつしか料理は出来上がり、JKは仕上げに取り掛かろうとしてふと気がついた。
この前、海苔ふりかけの話はしたっけ?
少し考えてから、JKは嬉しそうに携帯を手に取った。
もちろん、甘い海苔の話がしたい訳ではない。