ほしばなし

JK & JMに触発されて書いた、短いお話

2024-01-01から1年間の記事一覧

ある物語 1

これは、どこかわからないどこかの物語。 彼女は、その青年と森のなかで出会った。 細い紐のような植物に足が絡まって、身動きが取れなくなっている鳥がいた。どうにかその鳥を助けてやりたくて、そっと近づこうとしたとき、彼女は茂みのなかに獣がいること…

【私信です: 綾ちゃんへ】

綾ちゃん、今も読んでくれてますか? 綾ちゃんのアカウントがおかしくなって もう2週間以上経ちました。 心配です。 元気であればいいんだけど。 良かったら、こちらでもいいので声きかせてね。 ほし

海崖(かいがい)

JMは、丘の上にある展望台から見た海のことを思い出していた。 その日は天気が良くて海は青く、白波が陽光を反射して輝いていた。 弧を描く地形のせいで、遠くのほうにある、切り落とされたような崖に波が押し寄せている様子が、展望台からよく見えた。 迫り…

リップクリーム

リップクリームの味がきらい。 だから、家にいるときは寝る間際まで唇に塗らないでと言ってある。 その夜も、ちゃんと言いつけを守って塗らずにいたうえに ふざけて唇を合わせたあと、手で拭ったりするもんだから 上唇が乾いているのが画面越しによく見えた…

メヌエット

昨日ふたりで映画を見た。 そこで流れていた、三拍子のリズムが頭から離れない。 車の後部座席でセルフィーを撮影しているJMの携帯にうつる自分が、物欲しそうな表情をしているのは、たぶんそのせいだと思う。 もう少し顔を寄せないと うまく写らないだろ そ…

拍動

心臓が一生で収縮する回数は、哺乳類であればどの動物もだいたい同じ。 だから、体が小さく拍動のリズムが速い動物の寿命は短い。 友人宅でハムスターを手に乗せたときの、心臓が掌を打つその速度に驚いた話を家でしたら、兄がそう教えてくれた。 1人に一部…

【50本記念アンケート】ジャジャン♫

いつも読んで下さっているみなさま 本当にありがとうございます。 「good / bad」で投稿本数が50になりました。 「51件の記事」という表示をみて嘘でしょ?と疑ってしまいましたが、どうやら本当に50本も話を書いてきたようです。 それもこれも、みなさんの…

good / bad

待ってくれよ。 夜のテーマパークで、男は前を駆けていく息子を早足で追いかけていた。 クリスマス前には息子に弟ができる予定だが、妻は体調を崩して入院している。 とりあえず母子の命に別状はないときいて安心したものの、妻はしばらく安静にするため入院…

階段

渋滞にはまってしまった車は、さっきから少しも進んでいない。 並び建つ摩天楼に反響してか、クラクションの音が閉じた窓越しにも聞こえてくる。 こういうのがNYでは日常茶飯事で、と案内役の女性が前の席から声をかけてくる。 JMは気にしていませんよ、とい…

波に揺れる

「はやく」 余裕をなくしたその声が、自分かJMかどちらのものかわからないくらい、肌も心も密着している。 相手の吐息が肩のあたりで砕けるのを感じながら、JKは思った。 はやく。 自分はどうしていつも急いでいるんだろう。 はやく、上手くなりたい はやく…

JKは、誰もいない部屋にひとりでいた。 そして、鏡に映った自分の姿を見てやるせない気持ちになってしまっていた。 小さくしぼんだ姿で目の前に立っている子供のような自分とは、とても目を合わせることができない。 唇を重ねたのは衝動が引き起こした行動で…

奈落

「あ」 そのときJMの頭をよぎったのは、本当にそのひとことだけだった。 互いに折り重なるようなポーズで団体写真を撮ったときのことだ。 OKの声がかかって姿勢をほどいたときに、自分のすぐ前にあった頭がくるりと方向を変え、顔がJMのほうに向いた。 相手…

宇宙船

空っぽの状態より、家具があるほうが部屋は広く見える。 JKは夜空に向かってそびえ立つ摩天楼を眺めながら、誰かが前にそんなことを言っていたのを思い出していた。 トロフィーが身を寄せ合うように立っている高層ビルたちのせいで空はどこまでも高く、見上…

灯台

嘘だろ 携帯に届いた知らせ見て、JNは思わず声をあげた。 送信主の感情を読み解く余地もない程の短くて簡潔なメッセージに、JNは深く長いため息をついた。 最初は、幼い弟たちの恋愛ごっこだと思った。 キツい日々を乗り越えるための、いわば自衛策として、…