ほしばなし

JK & JMに触発されて書いた、短いお話

2022-01-01から1年間の記事一覧

オルフェウス

ステージのほうで自分達の名が呼ばれ、大きな歓声が上がった。 授賞のため一列になって出て行く兄達の傍に立ち、JKは列の後方に目をやった。 明るいステージに比べると裏の階段がやたら暗く、そこから上がってくるJMの白い顔だけがぼんやりと発光しているよ…

帰り道

仕事を終えてひとり、帰りの飛行機に乗り込んだ。 しばらく地上と連絡する手段は取り上げられるけれど、何かにつけて電話しては彼の声を聞きこうとする自分からも、これで解放されることになる。 機内で早速イヤホンをつけてブランケットにくるまると、心が…

the Dawn

若者の白い首筋に牙を立てると 青年に柔らかな眠りがやってきた 約束どおり 若者は青年の隣に体を横たえた 彼の首の傷口から流れ出た血液が 何か文字を描いているようにも見えたが それを読みとる間もなく 自分を見つめる若者の瞳に 吸い込まれるように 青年…

the Dusk

図らずも 吸血鬼にされてしまった青年が永遠の生という孤独に耐えかねて 長い長い旅に出た 昼間を避け 夜露をワインの代わりにし 梟に艶やかな歌声を聴かせ その強靭な脚で たくさんの川と山を越えて ある月の明るい夜 ヴァンパイア殺しが居るという古城に辿…

夜の色

目が覚めて携帯を見ると、もう午後になっていた。背中に意識を向けてみたが、そこに体温や息遣いを感じない。ドアの向こうからも物音がしないところをみると、JKはもう仕事に出たようだった。そこからたっぷり半時間ほど、寝そべった格好で携帯をチェックし…

雪の記憶

降り出した雨が、車の窓に引っ掻き傷のような痕を残し始めた。 今日は雨が降る日だったのか。 JKは、高速を走る車の後部座席から空を見上げた。 野外での仕事がない限り、家でその日の天気を気にしたりしない。外に出て初めて、暑さや寒さに気がつく始末だ。…