ほしばなし

JK & JMに触発されて書いた、短いお話

熱の痕

喉が渇いて目を覚ますと、横に寝ていたはずの彼の姿がなかった。

 

枕元の携帯に目をやると「ごめん、行かないといけなくなった」とメッセージが入っていた。

海外から帰ってきたばかりで、今日1日は休みになるはずだったのに。

JKはため息をついて、携帯を投げるようにベッドに置いた。

 

昨夜は、余計なものを部屋にに持ち込んで彼の眠りを妨げないよう、シャワーを浴びて外の匂いを落としてから彼の側に横になった。

こちらを向いている裸の背には月が静かに並んでいた。

月は本来空にひとつだけ浮かぶものだから、満ち欠けする月が並ぶその模様は、否応なく流れていく時間を暗示しているように見えた。

 

彼が目を覚ましたら、会いたかったと言うつもりだった。

自分に会いたかったかと訊ねるつもりだった。

 

一生離すまいと決めたのに、いとも簡単に彼は攫われてしまった。

 

暗い地下なんかで自分に向き合ってほしくなかった。

自分のそばで泣いて休んで、また動き出した。

それでよかったのに。

 

JKは急に、眠っている相手の身体になにか痕を残したい衝動にかられた。

彼がどこに行って誰に会ってどう過ごそうが、この自分を意識せざるを得ないような痕。

あの日、彼がふざけて自分の首に残したような痕を。

 

しかし、ステージや撮影をまだ控えてる彼の身体にそんなものを残せるはずがない。

 

JKは上半身を起こし、備わった筋力を目一杯使って、空気も揺らさない程の慎重さで彼に身を寄せて自分の顔を近づけた。

小さな寝息をたてて眠るその横顔は、減量のせいでずいぶんとシャープな印象で、JKを切なくさせた。

 

中指と人差し指で、彼のこめかみの髪をそっと払い、そこに優しく唇をつけた。

ああ、自分の唇の熱がずっと彼の肌に残ればいいのに、と思った。

全てを終えて再び自分の腕のなかに帰ってくるまで、傷痕のようにそこに残ればいい。

 

自分の行為で相手が目を覚ましていないことを確認すると、JKはそっと身体を離し、そのままゆっくりと体をベッドに横たえた。

 

目を閉じると、ティーカップに乗ってくるくるまわっている彼の笑い声が聞こえてきた。

 

一緒にあそこに帰りたいんだ。

君さえよければ。