彼の笑った顔が好きだ。
瞳のきらめきがまぶたに押されて
水面に反射する陽の光のように揺らめくから。
パッと明かりがついたような笑顔が見たくて
しばらくの間、自分の気配を消してから名前を呼ぶ。
泣き出しそうな笑顔を見たくて
誕生日を祝いに海を越えて帰る。
変なものを口にしてしまったのを誤魔化すような
無理して笑う顔が見たくて
別の人に寄りかかってみる。
自分が特別だと思わせてくれる
あの輝く笑顔が見たくて
尽きそうな力を振り絞って踊る。
その笑顔の持ち主が今、仰向けになった自分の上にのしかかっている。
ずいぶんと我儘で不敵な笑顔を見せながら。
ワークアウトに誘ってくれた、親友との待ち合わせの時間はもうとっくに過ぎているというのに。
伸びた髪の間から見える瞳が、夏の木漏れ日のように美しくて、どうしようもなく愛おしい。
こっちの約束のほうが先でしょ
そう言う声が耳元に降りてくるのを聞きながら、JMは、行けそうにない、と心のなかで友に謝った。