明かりを落とした部屋で
唯一ついてるテレビの光が
肌の上でチラチラ瞬いている。
横顔をさり気なく覗いてみたが
映画を観ていないのは明らかだ。
眼球が全く物語を追っていない。
瞬きさえ忘れたかのような瞳の
濡れた水面に虚しく
主人公達の闘いが映っているだけだ。
右頬が音もなく隆起して
穏やかではない感情が伺えた。
あんな噂に振り回されんなよ。
やんちゃに跳ね回ってる髪に
指を差し込んでみたら
奥は湿って暖かい。
指先にそっと力を入れると
やっと相手はこちらを向いた。
相手の瞳に映る自分自身から
目を離さないように
慎重に顔を近づける。
そうやって
自分だけ映してればいい。
相手の口の端にある小さな輪が
鈍く光る。
自分の口元を軽くこする金属の感触に
ようやくJMは目を閉じた。