図らずも
吸血鬼にされてしまった青年が
永遠の生という孤独に耐えかねて
長い長い旅に出た
昼間を避け
夜露をワインの代わりにし
梟に艶やかな歌声を聴かせ
その強靭な脚で
たくさんの川と山を越えて
ある月の明るい夜
ヴァンパイア殺しが居るという
古城に辿り着いた
そこには青年と同じような歳にみえる
若者がひとり住んでいた
蝋燭の炎が揺らぐたび
その若者は
男にみえたり女にみえたり
嬉しそうにみえたり
悲しそうにみえたりした
彼は言った
僕の血は特殊でね
君を永遠に眠らせることができる
でも寂しくはないよ
ずっと僕が眠る君の側にいる
この世界が終わるまで
青年は幸せのあまり
ルビーの涙を一粒
ぽろりと落とした
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