若者の白い首筋に牙を立てると
青年に柔らかな眠りがやってきた
約束どおり
若者は青年の隣に体を横たえた
彼の首の傷口から流れ出た血液が
何か文字を描いているようにも見えたが
それを読みとる間もなく
自分を見つめる若者の瞳に
吸い込まれるように
青年は長い眠りに落ちた
薄い布が幾重にも重なるように
青年は夢で夢をみて
その夢でまた夢をみた
若者は夢のなかでも青年のそばにいた
彼らは恋人になり兄弟姉妹になり
親友になり番(つがい)になった
一緒に海を見て星を見て
時折歌って時折踊った
泣くことも怒ることもあったが
結局、愛し合って過ごした
そうしてあるとき
体にかかったシーツをそっと引かれるように
青年は夢から醒めた
皮膚を裂くような気持ちで
目を開けると
紫が薄紅に溶けていくような
そんな朝焼けのなかに若者がいて
その背で大きな翼が開いていた
若者は言った
世界が終わろうとしてる
そろそろ行こう
若者から差し伸べられた手を握りしめ
青年は彼の名を呼ぼうとしたが
なぜか名前が出てこない
若者は慈しむような笑顔を
青年に向けて言った
君は僕で、僕は君だよ
ふたりの姿は重なって
世界で最後の朝のひかりの中に
溶けていった
おわり
画像:https://twitter.com/bts_