着替えも済んで、あとは楕円形のバングルを着けるだけなのに、慣れない形のせいか上手く輪を閉じられない。
もたもたと左手で金属ををいじっていると、急に後ろから人の気配が覆い被さってきた。
両脇から長い腕が回され、大きな手が右手首を包んだかと思うと、苦戦していたアクセサリーをカチリとはめてしまった。
礼を言うため振り返ろうとしたその背中に、厚い胸板がのしかかってきた。
まったく、もうシャワーも浴びて出勤の支度ができてるというのに、汗の匂いやベッドの記憶を擦り付けられては困る。
抗議しようと軽く身を捩ってみたが、肩に載せられた顎も首筋をくすぐる髪も、気づいてないかのようにその場から動かない。
ふと右手に目をやると、相手の手はバングルごと自分の手首を握ったままで、その親指が金属の下の肌をそっと撫でてきた。
JMはふと腕のアクセサリーの名を思い出して、相手に気づかれぬよう口元を緩めた。